引きずる悩みには、「観察する自己」を育てることが大切です。
「どんなに考えないようにしても引きずってしまう悩みがある。」
「くよくよ悩んでしまい、前に進めない。」
「1回落ち込んでしまうと、ずっと考え込んでしまう。」
考えないようにしても頭から離れない悩みに、苦しむ時があると思います。
この苦しみを解放するためには「観察する自己」を身に付けることが大切です。
今回は「観察する自己」とは何か?について、
そして、どうすれば「観察する自己」を常に意識できるようになるか?
をご紹介します。
悩みを引きずることに関連する、2つの「自己」について
始めに、ずっと悩んでしまう原因を説明するために、誰もが持っている「思考する自己」と「観察する自己」について話します。
テニスを例に説明すると、
テニスの試合に集中しているときは、あなたは相手の打ったボールに注意を向けています。
この時、あなたの中では「観察する自己」が働いています。あなたはこちらに飛んでくるボールに意識を向けており、何も考えていないはずです。
しかし、ボールを打ち返そうとするときに、
「ラケットの握り方はこれで大丈夫だろうか?」
「早いボールが来たな」
「打ち返すのを失敗しないといいな」
と考えたときは、「思考する自己」が働いています。
もしあなたが、この「思考する自己」に対し過剰に意識を向けてしまうと、テニスに対する集中は阻害されてしまいます。ボールに意識が向けられなくなってしまうからです。
つまり、「思考する自己」は「過去」の経験を思い出したり、分析したりします。
または、「未来」に起こりうることを想像したり、計画したりします。
対して、「観察する自己」は起きた出来事に気づいて注目しますが、考えることはしません。あなたが経験したことを記録するだけなのです。つまり、「現在」に意識を向けています。
まとめ
思考する自己:「過去」「未来」に意識が向いている状態
観察する自己:「現在」に意識が向いている状態
悩みを引きずるのは、「思考する自己」が原因
くよくよ悩んでしまうのは、「思考する自己」に意識を持っていかれてしまっていることが原因です。
この「思考」という厄介な相手は、追い出そうとしたり避けたりしても、再びあなたの頭の中に現れて、あなたを不快にするのです。
これは、何かを考えないように意識を集中しても、そのことをついて考えてしまう人の特性によるものです。
人は本来、自分の身の危険を察知して、回避することで生き延びてきました。
よって、不安や恐怖を与えそうなものに対して、過敏に反応するようにできています。
例えそれが、目に見えるものや事実でなかったとしても、頭の中で想像や分析をして危険を予知してきたのです。
(例えば、ジャングルに潜む猛獣を警戒して、安全な迂回ルートを選ぶなど)
「思考する自己」に意識が持っていかれることは、誰でも経験しているはずです。
例えば、あなたは人と話しているときに、別のことが気になってしまい、その人との会話の注意が反れたことはないでしょうか?
あるいは、仕事で失敗することが頭から離れなくなって、作業に集中できなくなったことはあるでしょうか。
人はこれらのことを「物思いにふける」「ぼーっとする」などと表現しますが、この時「観察する自己」は「思考する自己」に邪魔をされているのです。
以上のことから、人はそもそも悩み続けてしまうようにできているため、思考にとらわれてしまうということは、人として正常に機能しているとも言えるのです。
つまり、悩み続けてしまうのは、あなたの意志の弱さや生まれつきの特性ではないということです。
悩みを引きずらせる「思考する自己」のメリット/デメリット
「思考する自己」が悩み続けてしまう原因を作っていることを先ほど説明しました。
しかし、全てにおいて「思考する自己」が悪影響を与えるわけではありません。
前述した通り「思考する自己」が備わっているおかげで、自分に危険を与えそうなものを事前に察知し、それを避けることができます。
また、思考は何か画期的なアイデアを考えて新たなビジネスを生み出したり、本番のプレゼンテーションのために事前準備をしっかり行ったりするなど、その人の人生おいてメリットとなる場合もあります。
「思考する自己」が問題を起こしてしまうのは、自分の人生にとって全くメリットがない事や、集中しようとしている内容とは全く関係のない事を、頭の中で囁く時です。
(「どうせ失敗する」「退屈だなぁ」「今の貯金っていくらだったっけ?」など)
そんな時に「思考する自己」に意識を向け続けてしまうと、あなたは不快になり、あなたの人生にとって有意義な行動を起こす気力は奪われてしまいます。そうした状況では無駄に時間を消費した上に、メンタルや健康にも悪影響が出てしまいます。
悩みを引きずることを解消するには、「観察する自己」を育てる
「思考する自己」が引き起こしてしまう問題に対処するためには「観察する自己」を働かせることです。
先ほど、「観察する自己」が働いているときは「集中」していると説明しました。
目の前の作業で成果を出したい時に、その作業と全く関係のない「思考」が頭の中でささやいてきた際は、それを上手に対処することで無駄に時間を奪われることはなくなります。
そして、再び目の前の作業に集中し、自分にとって意味のある行動を起こすことができるのです。
例えば
- 告白が失敗するかもしれない恐怖を受け入れて、相手に好きだと伝える
- プレゼンテーションで恥をかくかもしれないという不安を抱いたが、大勢の前で自分の意見を伝えた
- 愛する人との会話や行動に意識を向け、かけがえのない時間を過ごした
- 「こんな問題は解けないよ」という心の囁きに負けずに、難解な数学の問題に挑む
これらは、「思考する自己」を上手に対処し、「観察する自己」を働かせたことによるメリットです。「思考する自己」に邪魔されないようにするだけで、自分の人生にとって有意義な行動を起こすことができるのです。
では以下に「観察する自己」を身に付けるための練習方法について紹介していきます。
悩みを引きずらないための「観察する自己」を認識する方法
「観察する自己が大事なのは分かったけど、あまりイメージがわかないし、どうすれば観察する自己に切り替えられるかわからない。」
と思う人もいるはずです。
なので、「観察する自己」をいつでも切り替えられるようにするために、エクササイズの方法を説明していきます。
実際にどうやって「観察する自己」になれるかを体験してみましょう。
今、この記事を読んでいただいているあなたは、PCかスマートフォンかタブレット端末が手元にあると思います。
あなたが持っているPCかスマートフォンかタブレット端末に対して次の以下のことについて実施してみてください。
- 表面を触ってみて、どんな手触りがするのかを確かめる
- 鼻を近づけて、どんな匂いがするのか嗅いでみる
- 耳を近づけてみて、どんな音を発しているか聞き取る
- 端末に当たっている光が、どのような形で反射しているか眺めてみる
4つのことをしているとき、あなたは何かに対し喜びや、不安や、イライラや、悲しみなどを認識していないはずです。心の不快さや、引きずっていた悩みも、この時だけは感じなかったはずです。
これが「観察する自己」です。
目の前の物体の手触りや、匂いや、見た目を探ることに、注意が向いていたと思います。
あなたはPCやスマートフォンという対象に「集中」していたのです。
抑えるべき「思考する自己」が出てきたときの対処法
では、実際にあなたを悩ませている対象についての対処法ですが、あなたを苦しませる対象の「タイプ」ごとに対処法を分けています。
以下に、あなたを苦しませるタイプごとの対処法をまとめた記事を紹介していますが、これらの対処法の基礎となるのは、「観察する自己」を認識することです。
あなたを悩ませるものが、頭の中に「言葉」として囁いてくるとき
例:「お前はどうせ失敗する」「幸せになんかなれない」「自分は無力で無価値な人間だ」
→「思考」に対する対処法
あなたを悩ませるものが、頭の中に「画像」や「動画」として出てくるとき
例:「上司に怒られる自分の動画」「打合せで上手に話せない自分の画像」「好きな人にふられた時の絵面」
→「イメージ」に対する対処法
あなたを悩ませるものが、悲しみや不安、怒りとして出てくるとき
→「感情」に対する対処法
繰り返しますが、これらの対策を上手に使いこなすためには、「観察する自己」を認識していることが大切になります。
最後に
衝動的になってしまったり、ネガティブな感情に悩まされ続けたりしている人は、
まずは自分の中には「思考する自己」と「観察する自己」の2種類が存在していることに気づいてみましょう。
特に衝動的になっているときは、「観察する自己」の存在を忘れてしまいがちなので、今回紹介したエクササイズで「観察する自己」の存在を再認識してみましょう。
再度お伝えしますが、今回の記事では「観察する自己」の大切さついて説明しました。だからと言って「思考する自己」が邪魔な存在と言うわけではありません。
「思考する自己」も生きていくために重要な機能です。
なので、「思考する自己」と「観察する自己」と上手に付き合っていくことを理想として目指していきましょう。