「事実」と認識している考えに苦しまない方法とは
「重い病にかかって、この先の生活が不安だ。」
「失業して収入がなくなってしまい、生きて行けるのか?」
将来に対する漠然とした不安や恐怖は、あくまで空想です。
(空想に対する解決策は、「脱ヒュージョン」や「イメージの対策」の過去の記事で紹介してきました。)
では、「実際に経験した出来事(事実)」で苦しんでいる場合は、どうすればいいのでしょうか?
例えば、病気になって体が思うように動かなくなってしまったとします。
「もう働いてお金を稼ぐことができない」
「この病気が治ることはない」
という言葉が頭の中に湧き出てきたら、この内容は空想ではなく事実かもしれません。
その時は、頭の中の囁きが自分にとって「プラス」となる内容かどうかを問いかけてみましょう。
私たちが意識を向けるべきことは、そのイメージや思考が「事実」であるか?は関係ないのです。
その悩みが「事実」か?という判断基準は必要ない
あなたを苦しませる心の囁きは、時には「事実」の内容かもしれません。
ですがその事実を何度頭の中で繰り返したとしても、自分の現状が変わることはありません。
むしろ、自己嫌悪に陥ってしまい気分を悪化させてしまいます。
例えば、ダイエットに失敗したときに、
「自分の体型は昔とちっとも変っていない」
「自分は誘惑に弱い人間なんだ」
と感じたとします。
この思考はジムに行って運動することや、食生活を改善することなど、あなたに改善の行動を起こさせてくれるでしょうか?
このネガティブな思考は自分を責め、ダイエットに対するやる気をなくすだけだと思います。
「ネガティブな感情は自分の感情を駆り立てる原動力となることもある」と思われるかもしれませんが、ほとんどの場合はネガティブな感情を避けようとして、ダイエットしたいのに暴飲暴食をするなどの悪循環が生まれてしまいます。
だから、「事実」の囁きに注意を向ける必要はないのです。
プラスになる考えと、メリットを生まない考えとは
記事の最初に、頭の中に出てくる囁きが自分にとって「プラス」となる内容かどうかを判断するのが大切だと言いました。
この「プラスとなる」という考えとは、
「どう行動すれば問題は解決するか?」
「どうやって現状を打破できるのか?」
など、解決策を考え次の一歩を踏み出せるようになるための方法を考えることです。
反対にメリットにならない考えは、自分を責めたり卑下したりなど、自己批判の思考を指します。
病気で体が動かなくなってしまった先ほどの例で説明すると、
「もう働いてお金を稼ぐことができない」
「この病気が治ることはない」
これらの内容は確かに事実かもしれません。
しかし、この内容を頭の中で何度も繰り返したところで、何かメリットはあるでしょうか。
病気の状態が良くするための行動につながらないだけでなく、気分が良くなるわけでもありません。
つまり、この思考は自分の時間を奪い、気分を害し、気力を奪うなどのデメリットを生み出すのです。
といった感じです。
この思考が自分に役立つかを確かめる質問
自分を悩ませる心の囁きが聞こえてきたら、以下の質問を投げかけてみてください。
・「この囁きに耳を傾けることで、何かメリットがあるだろうか?」
・「この考えは、人生を向上させるための行動を起こさせてくれるだろうか?」
・「これを信じることで、何を得ることができるだろうか?」
・「この思考は、自分が目標とする人間になるための助けとなるか?」
・「これは、自分が望む人間関係を得るための助けとなるだろうか?」
上記の質問の答えが「イエス」なら、この囁きはきっとあなたに「プラス」を与えてくれる思考です。
最後に
繰り返しになりますが頭に浮かんだ思考は、自分にとって「プラス」となる内容かどうかを判断することが大切です。
事実に対する思考は、「本当のことだから」と深く悩んでしまうことが多いと思います。
しかし、それに捉われて時間や労力を費やしてしまうよりも、新たな一歩を踏み出すために普段からこの考えを持っておくことが大切だと思いました。
本の紹介
タイトル:幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない
著者:ラス・ハリス
出版社:筑摩書房
幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない: マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門 (単行本)