先延ばし癖を起こす3つの原因とその克服法とは?
「ダイエットが継続できない」
「貯金をしようと思ってもなかなか貯まらない」
「勉強しようとしても明日に回してしまう」
何かを始めようと挑戦した際に、誰もが陥ってしまうのが「先延ばし」だと思います。目先の誘惑に負けてしまって、続かず辞めてしまった経験は多いはずです。
今回はこの「先延ばし」の原因と、その対策について紹介します。
先延ばしは、人の本能的な機能からもたらされることなので、誰にでも起こりうるものなのです。
先延ばし癖は、誰もが持つ本能的な部分が原因?
双曲割引とは
最初に以下の2つの質問をします。
①今1万円もらえるのと、1週間後に1万1000円もらえるのはどちらを選びますか?
②1年後に1万円もらえるのと、1年1週間後に1万1000円もらえるのはどちらを選びますか?
多くの人は、①では今1万円をもらえる方を選び、②では1年1週間後に1万1000円もらえる方を選びます。
これは、目先の利益(①)には忍耐力がないが、遠い未来(②)のことになると辛抱強くなるからです。
貯金を例とすると、
「今日は欲しいものを買おう(①)。半年後ならきっと貯金しているはずだし(②)。」
ダイエットなら、
「今日だけはデザートを食べよう(①)。明日からもう甘いものを食べないし(②)!」
と思うことです。
しかし、「次はしっかりしよう。」と思っても、その「次」になった時は、また今の時点での判断を下すことになります。
人は②の「遠い未来」を意識していても、常に①の「現在」での判断をしてしまうため、先延ばしが繰り返されてしまうのです。
このように「遠い未来」のことなら辛抱強いのに、「現在」の欲求には屈してしまいがちになることを「双曲割引」と言います。
先延ばしは脳の2つの機能が衝突して起こるもの
また、先延ばしをしてしまう原因は、心理学上では「脳の仕組みによるもの」という見解もあります。
人の脳には、前頭葉と辺縁系という領域があります。誘惑に負けずに自分を制御することができない理由は、この前頭葉と辺縁系の命令が衝突してしまうことにあるのです。
前頭葉は、人類の進化の過程で発達していきました。前頭葉には、長期的な計画を立てることや、合理的な判断をする機能を持ちます。この前頭葉のおかげで人は他の動物とは違い長い目で自分の利益になる行動をとることができるのです。
反対に、生物として古くから存在している辺縁系は、情緒的・本能的な働きをします。つまり、目先の利益を優先して判断する機能です。
この両者の命令のどちらを優先するかは、時と場合によって変わっていきます。それは、肉体的・精神的な疲労による場合もあれば、集中力が欠如している状態、または外部からの刺激によって感情が高ぶっている状態による場合などもあります。しかし、人間は基本的には目先の欲求に屈しがちなので、辺縁系の命令に従うことが多いと思います。
先延ばし癖を起こす原因3つとは
以上のことから、先延ばしをしてしまう主な原因は3つあります。
- 将来に意志を変更できるタイミングが来ると、意志を変更してしまう
- 短期的な欲望と、長期的な計画性が衝突する
- 将来の自分を他人のことのように思ってしまう
これらの原因の対策を以下に説明していきます。
先延ばし癖を防ぐ対策とは
「1. 将来に意志を変更できるタイミングが来ると、意志を変更してしまう」の解決策
先延ばしは「次はしっかりしよう。」と思っても、その「次」になった時は、また今の時点での判断を下すのを繰り返すことに原因があると話しました。
では、その「次」になった時に判断をできないようにすればいいのです。
例えば、
- 貯金をするならば、毎月自動的に定期預金に振り込まれるようにする
- ダイエットでジムに通う際は、友達と約束をしておいて2人で行く
などです。
自分がその選択を取らざるを得ない状況を作り出せれば、目の前の誘惑に負けることはありません。
「2. 短期的な欲望と長期的な計画性が衝突する」の解決策
何を選ぶかを自動的に判断するようにできれば、先伸ばされることを回避できます。しかし、何でもかんでも自動化できるとは限りません。
そこで、短期的な欲望に負けないための方法として「If-thenプランニング」も効果的だと思います。if-thenプランニングとは、「もし、Aの状況になったらBをしよう」というように、あらかじめ自分が取る行動を定めておくことです。(メンタリストDaiGoさんの「超習慣術」(第1章)を参考)
判断を完全に自動化することはできないですが、未来の自分が判断を迫られた時に、あらかじめ選択する行動を決めておくことはできます。
人は取り掛かる作業の優先順位を決める時や何かを選択するときに脳に負担がかかるため、楽な選択肢を取る傾向があります。しかし、あらかじめ選択肢を決めておけば、脳に負担をかけず、正しい判断をする確率が上がります。
if-thenプランニングの具体例は以下の通りです。
・お菓子を食べてしまう時は、お菓子を置いている棚に代わりにナッツを置く
・帰り道ついついラーメン店に寄ってしまうなら、帰り道のルートを変更する
「3. 将来の自分を他人のことのように思ってしまう」の解決策
例えば、半年後の痩せた自分を想像して、ダイエットに挑戦しようと思ったとします。しかし、あなたは半年後の痩せた自分を他人のように認識していないでしょうか?
多くの場合、未来の自分が隣にいるかのようにイメージしたり、未来の自分が何を考えているかを想像したりすることができないために、先延ばしてしまいます。逆に言えば、未来の自分を認識するだけでも先延ばしを防ぐことができると言うことです。
そのことを証明した実験を紹介します。
自分の顔を老いさせた画像を被験者に見せた後で、1000ドルのお金を入手したときの使い道とその金額について質問しました。
使い道は4つあり、
- 大切な人のためにプレゼントを買う
- 引退後に備えて定期預金に貯金する
- そのお金を使って楽しく贅沢な時間を過ごす
- 普通預金に預ける
すると、老いた自分の顔を見せられた被験者は平均172ドルを将来のために貯蓄することを選んだのに比べ、そうでない被験者は平均80ドルであった。
老いた自分の顔を見せられた被験者のほうが2倍以上も金額が多かったのです。
未来の自分自身が、現在の自分に対してどんな行動を望むのかを考えてみましょう。
最後に
先延ばしをすると、そのことが気になって集中できなかったりストレスを抱えてしまったりすることがあります。そして、「先延ばしをしてしまうなんて、自分はなんてダメな人間なんだ。」と自己嫌悪に陥ってしまう場合もあると思います。
まずは、先延ばしをしてしまうことを「人として当たり前のこと」なのだと思い、自分を許す気持ちが大切です。なぜなら、先延ばしは、人の本能的な機能がもたらすものであり、誰もが陥ってしまう可能性があるからです。
なので、自己嫌悪にとらわれることなく、ゆっくりと克服していきましょう。
先延ばしの原因として、脳の「前頭葉」と「辺縁系」と言う領域について紹介しました。
この2つの領域を象(辺縁系)と象使い(前頭葉)に例えて解説した人たちがいます。その人たちが書いた本には、今回の先延ばしのように感情によって理性が振り回されてしまう原因について紹介されています。先延ばしの原因についてもっと詳しく知りたいという方は以下の記事もよければ見ていただけると嬉しいです。
参考書籍
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)